「首里城下の女」
「ナビー、うまく仕止めてやった。
二度と墓から出られんようにしてやったが、寒気がする。なんだか体が冷えていくようじゃ。
さあ、早くお前のふっくらとした胸で私の体をあたためてくれ。なんだか恐ろしい心地がして手足がふるえるわい」
「お待ち下さりませ。いま酒をお持ちいたしまする。こんやから私も晴れて里之子の妻、なんでもお言いつけに従いまする」
情婦のナビーはよろこびをかくし切れません。
いそいそと酒の仕度をととのえます。
しかし、その盆を両手に持って部屋に戻って来たナビーは、あっ、と酒を取り落しました。
「あなた、うしろに」
「何」。
ふりむいて、嘉平川はぞっとしました。
妻の亡霊が鴨居から逆さにぶら下がっているのでした。
両足の甲から血を流し、口から泡を吹いています。
「嘉平川様、あなた、私の足を釘づけにしましたね。私、とうとう、こんな姿になってしまいました」
うらみごととははんたいに、血の泡を吹きながら口もとはニタニタわらっています。
「わっ」。
男と情婦は抱きあってふるえました。
男はまもなく狂死したと言われます。
いまの首里には都ホテルがそびえ、嘉平川の住居がどのあたりにあったのか、チルーの墓はどうなったのか、もはや探しようもない変りようです。